地下鉄が通っていないエリアに住んでいると、冬の移動はどうしても「バスか車か」という選択になります。バスが遅れれば仕事に間に合わず、車を出せば駐車場を探す手間も出てくる。そういう積み重ねのなかで「地下鉄があればな」と思う日が、毎冬少なくないはずです。
ヤマノテラスでエリア担当ライターをしているタケシです。西区在住で、平日は車で動くことが多いのですが、雪の日に宮の沢あたりからバスに乗り換えたとき、「もう少し先まで地下鉄が来てくれたら動きやすいのに」と思うことがあります。
今回は、手稲方面と清田方面への地下鉄延伸をめぐる最新の動きを整理しつつ、「では今の段階でわたしたちが知っておくべきことは何か」という観点で書いていきます。
今、延伸の話はどの段階にあるのか
地下鉄東西線の宮の沢駅からJR手稲駅方面へおよそ6キロ、東豊線の福住駅から清田区役所周辺へおよそ4.2キロという二つの延伸案が、それぞれ地元の期成会によって求められています。
2026年度の札幌市予算案には、地下鉄延伸を含む交通体系の見直し調査費として約1000万円が盛り込まれました。「延伸を決めた」のではなく、「延伸が成り立つかどうかを調べる段階に入った」という位置づけです。
「高架方式」で建設費を下げられるという案
手稲区への延伸を求める期成会は、2026年5月末の勉強会でコスト削減案を示しました。地下に掘るのではなく、高架方式で建設するというもので、屋根材にはつどーむ(東区)にも使われている軽量な素材を活用する想定です。
地下方式は1キロあたり約400億円とされる建設コストがネックになってきた経緯があります。高架方式でどこまで下げられるかは今後の試算次第ですが、「コストを工夫する余地がある」という具体的な案が出てきた点は、議論の前進といえます。
国の補助が増えると何が変わるのか
現在、国から自治体への地下鉄整備補助率はおよそ25パーセントです。自民党札幌支部連合の議員らが、積雪寒冷地での整備支援として40パーセント以上への引き上げを国に要望しました。
補助率が上がれば、市や地元が負担する金額が減ります。採算性の計算が変わってくるので、国がどう応じるかは、事業の現実感にそのまま関わってきます。ただ、要望が通るかどうかはまだ未定です。公式な動きは今後も注目しておく価値があります。
人口が減る札幌で採算が取れるのか
2025年国勢調査の速報値で、札幌市の人口は196万4034人となり、前回調査(2020年)から9361人減少しました。調査開始(1920年)以来、初めての人口減少です。
なかでも清田区の減少率は3.9パーセントと市内最大で、地下鉄延伸を求めている地域の人口がむしろ減っているという矛盾を抱えています。国への申請が必要な地下鉄整備では採算性が重要な判断材料になるため、人口減は事業の見通しに直接影響します。
バスの減便が「今」の切実な問題
地下鉄延伸の議論が熱を帯びてきた背景には、バス路線の相次ぐ減便や廃止があります。運転手不足が深刻で、手稲区では北海道科学大学や高校への通学バスの本数が少なく、混雑や遅延が日常化しています。
「延伸が実現するまでの間、どうやって移動するか」という問いが今の住民の現実です。市が調査に着手したのも、「バスが立ち行かなくなるなかで交通体系をどう立て直すか」という文脈から始まっています。

バスが減ってから動くより、減る前に手を打ちたいんですよね
延伸が実現した場合、誰にどんな影響があるのか
手稲方面への延伸が実現すれば、宮の沢以西のバス利用者、北海道科学大学や周辺病院への通勤・通学者、小樽方面からの乗り入れ利用者などが主な受益者になります。雪の影響をほぼ受けない移動手段ができるのは、生活の安定感として無視できないものがあります。
清田方面の延伸が実現した場合は、地下鉄駅が一つもない清田区の住民が主な対象です。ただ、清田区は人口減少率も高く、事業化への道筋は手稲方面よりさらに険しいとみる声も報道には出ています。
事業化までに越えなければならない壁
地下鉄整備は最終的に国の許認可が必要です。その審査では採算性、つまり「将来にわたって事業として成り立つか」が重要な基準になります。人口が増えている時期と、減少に転じた今では、その基準を満たすための説明が変わります。
- 採算性の審査
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国の許認可にあたり、事業が将来的に黒字化できるかどうかが問われます。期成会の試算では2080億円の投資で30年黒字化を想定していますが、人口減少を踏まえた再試算が必要になる可能性があります。
- 補助率の引き上げ
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現行約25パーセントの国庫補助率を40パーセント以上に引き上げる要望が出されています。実現すれば市の負担が減り、事業化の検討が前に進みやすくなりますが、国の判断はまだ出ていません。
- 高架方式のコスト試算
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期成会が提案した高架方式の建設費については、今後の具体的な試算が必要です。どこまで削減できるかが、事業化の現実感に直結します。
今の段階で動けることと動けないこと
延伸の実現には10年単位の時間軸が見込まれ、今すぐ何かが変わるわけではありません。市の調査が始まったばかりで、路線や駅の位置すら正式には決まっていない段階です。
- 延伸の最新情報は、札幌市の交通・都市計画に関する公式ページで確認できます
- 東豊線延伸については「地下鉄東豊線建設促進期成同盟会連合会」の公式サイトに経緯がまとまっています
- 手稲方面の延伸については「地下鉄東西線手稲区延伸期成会連合会」が活動情報を発信しています
- 市議会での審議内容は、札幌市議会の公式サイトで議事録から確認できます
今後の流れを大まかに追うならこの順番
調査費が計上された段階なので、今後は市が調査結果を出し、それをもとに延伸の可否を判断するという流れになります。調査の中身や結果は、公式発表のタイミングで確認するのが確実です。
市が約1000万円の予算で、バス路線や地下鉄延伸の可能性を含めた交通体系の調査を実施します。この段階では路線や費用の結論は出ません。
調査結果をもとに、市が延伸を本格検討するかどうかを判断します。採算性や補助率の動向がここに影響してきます。
市が事業化を決めた場合、国への許認可申請が必要になります。採算性の審査を経てはじめて、建設の具体的な話が始まります。
西区に住むわたしが気になっていること
わたし自身、西区に住んでいて宮の沢あたりをよく通ります。地下鉄がもう少し西に延びれば、手稲方面への移動はずいぶん動きやすくなるはずです。とはいえ、今はまだ「調査を始める」という段階で、具体的な路線や駅の位置はこれから決まっていくものです。
人口が減っているなかで採算を取るのは簡単ではない、というのが正直なところです。だからこそ、補助率の引き上げや高架化というアイデアが出てきている。どれか一つでも前に進めば、次の動きが生まれやすくなります。わたしはそういう目線で、今後の市の発表を見ています。
まずは、札幌市の交通関連のページを一度のぞいてみるだけで、今の経緯や今後の予定が分かります。みなさんが住む地域に直接つながる話でもあるので、気になった方はぜひ確認してみてください。













